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「あれ、明美?」
「あんた、何してんのよ」
「何って……」
相手の男──木崎貴司は、気まずそうに目を泳がせた。
「私がもらったプロフィールには、『山崎剛志、37才。エンジニア』って書いてあったけど?」
「……」
貴司は無言のまま頭を掻いた。
「あんたは、『木崎貴司、35才。コンビニ店員』でしょ?」
つまり、この男は嘘のプロフィールで婚活サイトに登録していたことになる。
私は呆れて溜め息をついた。
「あんたねえ。いつまで、そういう事を続けるつもりなの? いい格好しようとしたって、いつかバレるんだから」
「お、俺だって、いずれはちゃんと結婚したいと思って……」
「で? 奥さんに食べさせてもらうってこと?」
「……」
黙っているということは、図星なのだ。私が別れた理由はそこにある。
木崎貴司という男は、いずれ働かなくても良い未来を夢見ている。今は生活の為に働いているが、結婚したあとは、自由気ままに過ごしたいと思っているのだ。
「本当に、いい加減にしなさいよ。自分の思い通りになるほど、世の中甘くないんだから」
「分かってるよ。そんなこと……」
「分かってないから言ってるんでしょ?」
「あの、ちょっと良いですか?」
どんどんおかしな方向に話が進んでいるのを、仲介の女性が止めに入った。
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