北極に捨てられた少女

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北極に捨てられた少女

体中の痛みで目が覚めた少女は、汚れた目隠しを外し、ゆっくりと体を起こす。 周りを見渡しても、あるのは白一色。 ただただ白、白、白、白。 限りなく続いていく純白の氷たち。 そんな極寒の地に一人の少女がいた。 「ここが『北極』…。噂より綺麗な所ね」 自嘲の笑みを浮かべた少女は、顔に掛かる長い黒髪を後ろに払い、衣服についた泥や氷の欠片を落とす。 少女の名前は、ディア・アナスタシア、13歳。 父親の横領罪により公爵の位を剥奪され、北極追放となった。 ディアは目隠しをされた状態で馬車に乗せられ、その後はゆらゆら船に乗り、北極の中に運ばれ、放り出された。 「このまま、ここに居たら凍死…よりも先に餓死しそう。どこかに『出口』があればいいのだけど」 ディアは太陽を頼りに、南を目指して歩き出す。 「…私を殺したいなら、さっさと殺せばいいのに。どうしてわざわざ北極送りにするの!」 ここまでの道のりで涙は流し尽くしていてもう出ない。 今は死への恐怖よりも自分を罪人扱いした人々への怒りが勝った。 ディアは強い子供だった。
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