ロンバルディア帝国の奇妙な風習

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ロンバルディア帝国の奇妙な風習

ディアが生まれ育ったのは、ロンバルディア帝国という伝統ある偉大な国だ。 そして、幼いディアを北極送りにした国である。 帝国には古くから「汝、死を見せるべからず」という奇妙な文化があった。 たとえ葬儀であっても、誰にも遺体を見せないのだ。 特に、誇り高きロンバルディア人の貴族にとって、自身の死体を大勢の民の前で晒されることは最も恥辱的な行為だ。 本来、横領罪は重罪であり、一族全員が公開死刑となる。 だがアナスタシア家は長年ロンバルディア帝国の発展に尽くしてきた功績がある。 おまけにディアは幼い。裁判官が少女に酌量し、北極送りとなったのだ。 つまり、 「殺したいのは山々だが、幼い子どもの死体を晒すのは可哀そうだ。見逃してやるから、極寒の無人大陸でひっそりと死ね」 と、いうこと。彼女は勿論そのことを知っている。
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