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北極を彷徨う少女 1
「…私はここで独り、寂しく死んでいくのかな」
やがて陽は沈み、辺り一面が暗黒に覆われる。
ディアはなるべく小さくうずくまり、何とか寒さを凌ごうとしていた。
季節は、春の終わりだった。
昼の寒さに耐えられても、夜は耐えられそうもない。自分の体が勝手に震えるせいで、満足に眠ることも出来ない。出来ることといえば、ただ朝を待って祈るのみ。
ようやく陽が差し始める。氷が光を反射し、眩しい。
「こんなところで死ぬなんていや…!」
ディアは直ぐに立ち上がり、再び南を目指して大きく歩き出した。
「生きて、あいつらを見返してやる…!」
それから歩き続けて丸一日が経った。
歩きすぎて動けなくなったディアは、仰向けに倒れて、空を見ていた。
「もうだめかもしれない…」
じんわりと涙が溢れてくるのがわかった。眩しい太陽の光が滲んで、思わず両目を閉じる。
瞼の裏には、走馬灯のようなものが見えてきた。
過去の記憶たちが、家族と過ごした家が、友達と遊んだ花畑が、鮮やかに、蘇ってくる。
このまま、最後の時を待つだけか……。
その時、
「あの~、生きてますか~?」
はっとして声の主を探す。
ディアの真横で、ピンクブラウンの髪の女性が心配そうにディアを見ていた。
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