“言の鎖”

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 頭の中でなにかが、壊れたような気がした。  昼間のうちに落ち着いてしまい体の奥底に沈み込んでいた劣情が一気に湧き上がってくる。欲望の権化が激しく脈打ち眩暈にも似た強烈な興奮が視界を歪める。呼吸が乱れ喉が渇く。  そんな剣呑な(けだもの)の気配を察したのか、横たわっていた女が重そうに瞼を開いた。 「……え……なに……?」  朦朧とした気弱そうな、吐息のように漏れる不安に満ちた声を聞いた瞬間、視界が真っ赤に染まったような錯覚。  居ても立っても居られなくなり女の豊満なふくらみを鷲掴みにする。 「ちょ、誰ですかあなた! やめて! ひとを呼びますよ! いや、助けて! 誰かあっ!」  当然、女の声に答えるものは誰もいない。 「誰だって? お前の眷属だろう。お前が言ったんだぞ」  パニック寸前の引きつった、泣きそうな声が征服欲を加速させる。この高慢ちきな顔が俺の下で涙目で叫んでいるさまはそれだけで達してしまいかねないほどの興奮をもたらした。 「無駄だ。声はどこにも届かない。誰もここには来ない。お前のおかげでな」  薄絹を引き裂き髪を掴む。苦痛に歪む顔がたまらない。 「いや、なに!? やめ、これ、どうして!? 私の体じゃ! いや、いやああああっ!!」  長い黒髪も豊満な肢体も意識を失うまでは無かったものばかり。今にも犯されようという間際にそれを認識してしまい混乱が極まったのか、もはや半狂乱になっている。  だがそんなものに構っている余裕はない。こっちはもう爆発寸前なんだ。  か弱い抵抗などまったく意に介さず、これまでの鬱憤を晴らすかのように女を貪る。  朝も。  昼も。  夜も。  何度も。  何度も。  何度も。  際限なく繰り返す。  やがて抵抗が無くなってもなお女は飽きることなく蠱惑的で、俺はもうそれ以外なにも考えられなくなっていた。  だからそのときがきた瞬間、まったく事態を理解できずに……。
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