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「な、俺がもし、今晩会ったあのホテルの前でお前の誘いに乗ってたらさ……どうなってた?」
「なんだよ。……あんたが寝てる間に置いて帰っただろって?」
ベッドの上で俺に腕枕をしてくれている京ちゃんは、何故か半笑いでこちらに顔を向けた。
「やっぱりそうなんだな!?ほんと許せねー、一生許さない」
「随分と根に持ってんじゃねぇか」
「持つよ!」
もう二度と逃しはしないとでも言うように、京ちゃんの身体をギリギリと抱きしめる。
ぶっ飛ぶまで犯されて翌日は忽然といなくなるなんて、冗談もいいところだ。軽くトラウマになったんだぞ。
「いででで、いてぇよ幸人。自宅に連れ込んだんだから分かるだろ。もうあんなことする気はなかったってば」
「ほんと?」
返事の代わりに京ちゃんは俺の髪にキスを落とした。
「……な、幸人…もっとしたい」
京ちゃんは俺の返事も聞かずに――まぁ聞かなくても分かるからだろうけど、俺の腰を抱き寄せて後ろの穴に手を伸ばした。
「ん……っ、京、またちょっと慣らし直さないと…お前の入んない」
「な、あんたここ最近、他の誰にも抱かれてねぇの?」
処女並みにキツい、と呟いた京ちゃんの頬をつねる。
「バーカバーカ京ちゃんのバカ。俺はゲイでもバイでもねーの、お前以外の男に掘られる趣味なんてねーよ」
「…ヤバい、めっちゃ嬉しい。けど…」
京ちゃんはローションを手のひらで温めながら尋ねた。
「俺にあんな開発されて、物足りなくなったりとか…なかったのか」
「はー?一人でするときはせいぜい指一本しか」
墓穴を掘ったことにハッと気づき、俺は羞恥に顔を熱くして口をつぐんだ。
「やっぱ一人でも後ろ触ってたんだ」
手をかざして目を細めたくなるほどのキラッキラした眩しい笑顔で京ちゃんは言った。
「誘導尋問はずる…ぅううあ」
指がぐーっと差し込まれ、ローションを塗り込むようにゆっくり動く。ちゅくちゅくと水音が聞こえてきて恥ずかしさに身悶えする。
「ね、けぇちゃんは……?」
「さぁ……?」
躱すような返事に少し泣きそうになって、京ちゃんの胸に頭をぐりぐり押し付ける。
そもそもホテルから出てきたところで鉢合わせたんだもんな。このマンションだってそういう相手から贈られた一室みたいだし。
……京ちゃんは美人だもん。
「泣くな泣くな」
「うっせ、泣いてねーし」
「言っとくけどな、男はあんたしか抱いたことねぇよ」
京ちゃんは順調に指の数を増やしていくと、俺を抱き起こしてその膝に乗せた。向かい合うと俺の頭の位置の方が高くなるから、俺は首を縮こめるようにして京ちゃんに口付けた。
「まじで?」
「うん。幸人、自分で挿れて」
「わ、分かった」
片手で京ちゃんのを掴んで穴にあてがうものの、思い切りがつかない。怖いし、全然入らないし。
もたもたしていると京ちゃんは俺の頬を撫でて、キスをする。注ぎ込まれる京ちゃんの唾液を飲み込む。僅かに歯磨き粉のミントの味がして――それなのに甘く感じるのは錯覚だろうか。
キスに夢中になっているうちに、京ちゃんは俺の膝を掴んで一気に引き寄せた。京ちゃんのが入ってきたと思えば自重でいきなり奥まで届いて、悲鳴に似た声が上がる。突き抜けるような痺れに似た快楽。視界が白く点滅する。
「イった、から、うごかなっ」
「出てないのに、なぁ?」
「うそだ」
「嘘じゃねぇよ。メスイキできんのな、エッロ」
京ちゃんは膝をがくがく上下に揺らし、容赦なく俺を責め立てる。
「きもちい、おかしくなる」
「いーよ」
「すき、けいっ」
「うん、俺も」
その後も京ちゃんの気が済むまで抱かれ、泣かされ、少し休憩を挟んではまた抱かれ、というのを何べんも繰り返した。
馬鹿でかい窓の外が徐々に明るくなり、眩しい朝日が地平線から顔を出す頃、やっと俺と京ちゃんは深い眠りについたのだった。
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