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そうして月日が過ぎ、高校二年生になった。
全ての始まりは、俺が伯父の譲の家を訪ねたあの日だ。
母さんの歳の離れた弟である譲は、たったの10歳差。俺にとって伯父さんってより、むしろ兄みたいな存在だ。譲からしても、実姉である母さんより甥っ子の俺の方が歳が近い。
だからか昔からよく遊んでもらって懐いていた俺は、かなり頻繁に一人暮らしの譲の家に入り浸っていた。チャリで15分もかからない場所で、ゲームも豊富なそこはいわば、秘密基地みたいなものなのだ。
ある休日、俺は久々に(とはいえ前回から一ヶ月も経っていない)譲のアパートの部屋の前に立ってチャイムを押した。
しばらくしてドアが開き、そこに現れた男と目が合うこと三秒弱。
「………………けい、ちゃん?」
見慣れた美少年。だぼだぼ袖が余った譲のお気に入りの深緑色のパーカー。
急いで裸に羽織ったらしい。上げきってないジッパーの隙間から、白い鎖骨が見えた時点でお察しだ。
俺はそこそこ性に奔放であることを自他共に認めているし、そういう経験は割と多くて、つまり瞬時に色々と悟ってしまった。
京ちゃんの狼狽する表情なんて初めて見る、なんて考えている間にドアを閉められ、俺は「けーちゃーん!なんでぇ?ゆずりぃー?」とバシバシ叩いた。
そのまま一、二分は放っておかれて、やっと再びドアを開けてくれた京ちゃんは自分の服をきっちり着込み、やや青ざめた顔色をしていた。
「えっと…事後?それとも最中だった?」
ベッドの上で呑気にシャツのボタンを留める譲と、隙を見て帰ろうと目論んでいるらしい引き攣った顔の京ちゃんを交互に見遣る。
「最中だった、空気読めユキ。ところで二人って知り合いだったんだね。何繋がり?」
「…クラスメイトだよ」
「あ〜なるほど、クラスメ……――は?」
今度は譲の方が蒼白になった。
「俺、高校生に手ぇ出した……?」
待て待て待て待て。つっこみたいところが沢山ある。
まず譲が男もいけるなんて聞いてないし――まぁ京ちゃん相手ならなら納得だけど。…って違う、そうじゃなくて。
京ちゃんも浮いた話を聞いたことがないと思ってたけどまさか、ゲイだったってこと?
…んで、年上の彼氏?
加えて譲の反応を見る限り、年齢を偽ってる?
ぐるぐる混乱していると、それまで発言のなかった京ちゃんがやっと口を開いた。
「今更だけど、ユズさんと中村って…」
「俺は譲おじさんの甥っ子」
京ちゃんは頭を抱えた。
話を聞くに、京ちゃんと譲はセフレらしい。
マッチングアプリで出会い、半年ほど前からの関係だったという。どうやら京ちゃんは大学一年生と偽っていたようだ。
「ごめん、京くん…高校生とはちょっと」
「謝るのは俺の方ですよ。嘘ついてすみませんでした」
京ちゃんは譲に対してそう言いつつ、こっそり俺を睨んだ。まぁ気持ちは分かるよ。分かるけどさ。
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