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俺と京ちゃんの関係は、卒業まで続いた。
「え、あんた俺以外のセフレ切ってたの」
京ちゃんと関係を持ち始めてから割とすぐ、俺はそういう相手を京ちゃん一人に絞っていた。
それまでセフレは常に五人以上いて、恋人を作っても一ヶ月と続かない俺からすればこれは異常事態だった。二年弱もの間、特定の人としか寝ないだなんて。しかも男だし。
「とっくにね。でも京ちゃんだってあれからずっと俺だけだろ?」
「まぁ…そうだけど」
予定つけやすい点では学校内のセフレも悪くなかったな、と京ちゃんは言った。
まぁ京ちゃんにとってはきっとその通りだったんだろう。同じ高校生、部活は別々だけど活動日は一緒で、京ちゃんが暇な時は大抵俺も暇で。だから複数人と関係を持つ必要性はなかった。
俺は単なる都合のいい相手。合理主義の京ちゃんらしい。
そんな京ちゃんのことを、いつしか好きになっていた。
セフレで全く問題はない。京ちゃんは俺としか寝てないし、俺もそうだし、そんなのほとんど恋人みたいなものだ。
「大学は別になるけどさ…、京ちゃんとはセフレでいたい」
京ちゃんはキョトンとして、それから困惑したように視線を落とした。
「あんたそれ、本気で言ってんのか」
半分は頷いてくれると信じていた。
もう半分では、拒否されるかもなんて思っていた。
…後者、か。
そりゃそうだ。大学が別になればそう上手く都合なんてつかない。しかもお互い遠くなって一人暮らしになるんだから、セフレとしては非合理的なこと間違いない。
俺の恋は、呆気なく終わった。
「京ちゃん…今夜で最後にしよう」
「そう、だな」
最後のセックスは今までで一番優しいキスから始まって、それなのにどんどん激しさを増していって、俺は今までにないほどボロボロになるまで抱き潰された。
最中に気絶するなんて初めてだったし、それでもやめてもらえず過剰なほどの快楽に意識を引き戻される。
しんどいのに気持ちいいし、最後だから壊れるくらいに抱かれているんだと思うと切なくて虚しくて、このまま死にたいとすら思った。
この期に及んで京ちゃんへの恋慕は増していって、じりじりと身を焦がすのだ。みっともなく涙を零しながら、俺は京ちゃんの腕の中で揺さぶられていた。
最近京ちゃんはぐんと背が伸びた。身長は俺とほぼ変わらないか、もしくは若干越されたかというところ。
「泣くなよ、…ゆきひと」
「けぇちゃ…、ころし、て」
京ちゃんは俺の首に指を這わせ、徐々に力を込めた。
頭の中で渦巻く悲しさや辛さは霞んで、ただただ快楽だけがそこに残る。
セックスで首を絞められるのは初めてじゃない。だいぶ前に俺が興味本位で頼んでみれば、あまりにも上手なのでたまにやってもらってた。京ちゃんはあまり好きじゃないみたいだけど。
声が出ないから、口の動きで「もっと」とせがむ。
京ちゃんは困ったような、泣きそうな顔をしていた。
綺麗な京ちゃん。大好きだ。
翌日の昼過ぎ、死ねなかった俺は自室のベッドの上で目覚めた。
喘ぎ過ぎて喉は痛いし、腰も尻も痛いし、始終泣いていたせいで目元も腫れて痛いし。
……隣で眠っていたはずの京ちゃんは跡形もなく消えてるし。
俺はまた泣いた。連絡もつかなくなっていた。
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