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忘れ物を取りに教室に入ろうとした時、中の話し声が聞こえてきた。
「マジでないよな。あの大女。」
入るのを躊躇ったのは、私の話だって気がついたから。
たぶん今日の掃除の時、ふざけていた男子の誰かだろう。
「あのデカさで小菅茉莉ってないよな。おおすげだよ。」
私は、教室の後ろの引き戸に背中を預けて、言いたい放題な男子の会話を聞く羽目になった。
忘れ物は宿題のプリントだから、出来れば取りに戻りたいけど、中にズケズケと入れる程、私の心は強くない。
クラスの男子とほぼ同じくらいの身長、173センチはバスケ部では抵抗がないが、教室ではいささか目立つ。
自然と女子の中で頼りにされ、男子に注意する役目を押し付けられることが多々あるのだ。
本当は、かわいいものが大好きな普通の女の子なのに…
開き直って入ろうかと思ったその時、さっきまで黙っていた別の声が聞こえて来た。
「小菅は、結構かわいいとこあるし、そこまででかくないよ。」
その一言にドキッとした。
「そりゃ新見は自分が185あるから、気にならないだろうけど、女ってちっちゃくてかわいい方がいいと思うぞ。」
さらに言う男子に新見君は言った。
「お前たちには、小菅の良さがわからないんだな。まぁ、それならそれでいいけどね。」
「なんだよ。」
「ライバルは、いない方がいいからね。」
いま新見君、なんて言った⁈
私はびっくりして、ズルズルとその場に座り込んだ。
「それじゃ俺、帰るわ。」
新見君は、そのまま後ろの扉から出て来て、座り込んだ私と目が合った。
「と言うわけだから、小菅、俺と付き合って。」
私がここにいたことに気づいていたの?
新見君に引っ張ってもらって、立ち上がった私は、さらに大きな新見君の腕の中に真っ赤になって、すっぽり収まっていた。
「やっぱ、小菅ってかわいいよな。」
私の中でキュンキュンが止まりません。
これって恋ですか?
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