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誕生日プレゼントが婚姻届でした。
3回目のデートは、仕事帰りのレストランで。
「真里さんの誕生日、どこかにいきませんか?平日なので夕食だけでも一緒に食べませんか?」
順一さんは、12月2日が私の誕生日だと覚えていて、こんなメッセージをくれたのだ。
そのことがとても嬉しかった。
まだ親しくはないけれど、これから少しずつ仲良くなっていけそう、と考えていた。
彼からプレゼントがもらえるかもしれないとも思っていた。
私は物欲が強い人間ではないし、何かをねだるつもりもない。
でも付き合ってからほぼ2か月目で私の誕生日でもある。
私たちは世間一般の「カップル」だと思っていた。
だから甘い展開に期待していたのだが。
「結婚式は1月中にしようと思いますが、真里さんのご予定はいかがですか?」
「えっ!?け、結婚式ですか!?」
料理が来るのを待つ間、彼は唐突にこんなことを言い出した。
「ええ。付き合って2か月近くになりますし。ああ、そうだ。婚姻届を書いてきたので、真里さんも次に会う時までに自分の欄を埋めてきてもらえますか?」
彼は笑顔で鞄から婚姻届を取り出した。
ずいっと渡されて思わず受け取ってしまう。
ラブラブカップルならば喜ぶはずのシチュエーションなのかもしれないが、私たちはまだ4回しか会っていない仲だ。とりあえず苦笑をするしかできなかった。
「は、はい…。ありがとうございます…。」
出された料理のことを全く覚えていない。
ただ「これでいいのかな」「今なら引き返せるのかもしれない」「でも他に結婚相手はいないし」とぐるぐる悩んでいた。
結局、彼からの誕生日プレゼントはなかった。
後になって考えると、あの婚姻届がプレゼントのつもりだったのではないか、と思う。
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