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お見合い結婚でしたね。
私、寒河江 真里 が夫の順一さんと結婚して1か月が経つ。
私たちが出会ったきっかけはお見合いだった。
何があっても娘を結婚させたい母親の、6回目となるお見合い手配を断ることができず、重い気持ちで紹介を受けたのを覚えている。
暑さが残る10月、休日の午後のこと。
私たちが初めて顔を合わせた場所は地元で有名な和食料理店だった。
順一さんは約束時間の10分前に姿を現した。
「はじめまして。寒河江順一です。」
銀の眼鏡が似合う黒髪の男性だった。
彼への第一印象は「平凡」だった。
平凡な外見、経歴、性格、話し方、声…、すべてが平凡に見えた。
「平凡」というと、なんだか彼のことを馬鹿にしているように思われるかもしれないが、そうではない。
過去5回のお見合いで出会った方々が…なんというか独特すぎたのだ。
初デートに真っ赤の車に乗って真っ赤のシャツを着て現れた人がいたし、初デートで「俺、女優の○○○○が好きだから、彼女みたいな恰好してくれる?」という人もいた。
そういう人たちに比べると、彼はまさに私が求めていた「普通の人」だったのだ。
私たちはしばらく当たり障りない会話をし、昼食をとって解散した。
メルアドを交換した後、彼は笑顔で言う。
「今日は本当にありがとうございました。またご連絡しますね」
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