4031人が本棚に入れています
本棚に追加
苦しい恋心ばかりに疲れ切っていた。
朋美には気づかれていたと思う。亜貴に伝えられないまま、ずっとこころの奥に燻って、消えないまま彷徨っていた。
今も変わらないけれど、せめて私を大切にしてくれている朋美の瞳に映る私が、少しでもしあわせそうに見えるように。そうでなければ、朋美は本当に総司と別れて、私を抱きしめてくれてしまいそうな気がした。
世界で一番好きな女の子だ。
ずっとしあわせにいてほしい。朋美が同じように思ってくれているのだとしたら、どれだけうれしいだろう。
「へへ、だいすきげっとだぜ」
朋美が茶化したように笑って、小さく風が吹き込んだ。
瞼を一度擦り合わせる束の間に、朋美に抱きしめられていた体が剥がれる。驚きもしない朋美の瞳が一瞬胡乱げなような、呆れたような色で光ってから、ため息を吐いた。
「俺の彼女、取らないで」
頭上から飛んだ声に、心臓がひねくれそうになった。
パフォーマンスしようとしなくていいのに、こんなふうに、揺さぶったりする。こんなふうに、見せびらかしてみせなくても良いのに。亜貴の指先がお腹に触れている。布越しでも熱くて、視界の奥がぐらぐらと揺れて見えた。
「亜貴くんは結構独占欲強いよね」
最初のコメントを投稿しよう!