花火のような恋が砕ける

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苦しい恋心ばかりに疲れ切っていた。 朋美には気づかれていたと思う。亜貴に伝えられないまま、ずっとこころの奥に燻って、消えないまま彷徨っていた。 今も変わらないけれど、せめて私を大切にしてくれている朋美の瞳に映る私が、少しでもしあわせそうに見えるように。そうでなければ、朋美は本当に総司と別れて、私を抱きしめてくれてしまいそうな気がした。 世界で一番好きな女の子だ。 ずっとしあわせにいてほしい。朋美が同じように思ってくれているのだとしたら、どれだけうれしいだろう。 「へへ、だいすきげっとだぜ」 朋美が茶化したように笑って、小さく風が吹き込んだ。 瞼を一度擦り合わせる束の間に、朋美に抱きしめられていた体が剥がれる。驚きもしない朋美の瞳が一瞬胡乱げなような、呆れたような色で光ってから、ため息を吐いた。 「俺の彼女、取らないで」 頭上から飛んだ声に、心臓がひねくれそうになった。 パフォーマンスしようとしなくていいのに、こんなふうに、揺さぶったりする。こんなふうに、見せびらかしてみせなくても良いのに。亜貴の指先がお腹に触れている。布越しでも熱くて、視界の奥がぐらぐらと揺れて見えた。 「亜貴くんは結構独占欲強いよね」
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