花火のような恋が砕ける

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何も考えられない頭で必死に声を紡いで、目の前の朋美が笑ったのが見えていた。私と亜貴の体が入れ替われたら、亜貴はもっとずっとしあわせだっただろうか。 どうやっても亜貴を不幸にしてしまいそうで唇を噛みたくなる。 亜貴は、朋美と一緒にいるために私のそばにいる。きっと幼馴染として私を大切にしてくれているけれど、それ以上に、朋美の存在があるから、こんなにくるしくてもここにいてくれている。 「まあ、それが梢ちゃんにとっての最高なら、私もそれで良いけど~」 けらけら笑って、目の前に来てくれる。朋美の指先が、私の頬に触れかけて、亜貴が遮るように朋美の手を掴んだ。息が止まってしまいそうだ。 「あーきーくん?」 「朋美ちゃん、たまに梢の触り方がいやらしい」 「はーい? 亜貴くんはいっつもやらしいよ」 「俺は彼氏だからいいの」 「私も梢ちゃんの親友だからいいの」 遊ぶような掛け合いに、二人が笑っている気がする。 私で遊んでいるみたいだ。亜貴は、朋美と話すときだけ、少し調子が砕ける。それは、総司と話しているときと私と話しているときの中間あたりにあって、女の子と話すトーンにしては少し乱雑だ。 たぶん、それくらい心を許している。
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