花火のような恋が砕ける

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「ソージが来たらまたややこしくなるわ。梢ちゃんの一番決定戦はしばらく休戦ね」 「はは、了解」 「了解~じゃねえよ! こずは俺が一番だよな~?」 「それだけはない。ソージ、火おこしは終わったの?」 「俺も、それはないと思う」 「それはないと思う。じゃないじゃん! 火おこし終わった! 終わったから、あっくんに呼びに行ってもらったはずなんだけど~?」 「梢が朋美ちゃんに襲われかけてたから、救出してた」 「え? マジで? どう見ても俺にはあっくんとこずの二人がイチャイチャしてるようにしか見えないんだけど」 「そう、奪われたの。私のラブは」 「いや待って、ともちゃんのラブは俺にちょうだいよ」 「ふふ、もう、そうちゃん慌てすぎ」 「こずはみんなに好かれてんじゃん。ともちゃんを奪われそうで焦ってる俺の身にもなって!?」 誰からも好かれている男が叫んだ。全員が笑っている。亜貴も私もひび割れのこころを抱きしめて、必死に笑みを浮かべている。 「いや、そうだな3人まとめて俺が愛すわ」 「うわ」 「総司の愛は重たそうだからなぁ」 「あっくんに言われたくないんだけど……」 ふざけた総司がげんなりして見せたら、今度こそ笑い声が爆発した。 薄氷の上を眺めて、そっと足を下す。恐々歩く私は、いつ水の中に吸い込まれてしまうのだろう。 「とにかく! 早く食おうぜ」 総司のまぬけそうな溌溂とした音程に、全員が顔を頷かせていた。
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