花火のような恋が砕ける

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全部聞こえているらしいから、笑えてしまう。 仕方なく、亜貴と二人でゴミの分別を切り上げて、総司の近くに寄った。にへらと笑ったまま、手持ち花火をひとつ、手渡される。 ふいに、亜貴と二人、ベランダに浮かべた線香花火の匂いを思い出してはかき消した。 「花火、久々だなあ~」 やたら嬉しそうな総司に笑って「そうだね」と呟いた。本当は、そんなに久しぶりでもない。 ちらりと横を見たら、亜貴が私と同じような顔をしていた。言わないほうがいい事情だと判断して総司を見つめれば、不満げな瞳とぶつかる。 「こず」 「うん?」 「仲間外れ?」 「ええ? なんで?」 二人に秘密にされることに敏感なのは、亜貴だけじゃないのかもしれない。苦笑して「亜貴とこの間、二人でやったんだ」と言ったら、今度こそ盛大に「仲間外れ!」と駄々をこねられた。 終わってしまった花火をバケツの中に入れて、総司が私と亜貴の間に入ってくる。暗がりの中で、すぐ近くの焼き台の火と、コテージから漏れるあかりだけがゆれている。 総司の立ち位置は常に私と亜貴の間にある。 「総司?」 「なっつかしいな~」 「うん?」 尋ねるように首を傾げたら、総司の手が肩に乗った。ぐっと寄せられて隣を見たら、亜貴も同じように肩を抱かれて吃驚している。 三人肩を寄せ合っていることに気付いて笑ったら、総司がもう一度「懐かしい」と言った。
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