花火のような恋が砕ける

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「ほんとうだ、懐かしいね」 亜貴のつぶやきで、過去の記憶がぶり返してくる。 毎年、花火は三家族の合同イベントだった。大量に買い込んで、皆で盛大にやるのが普通だった。小学4年生のころ、一度だけ岡本家が夏休み中、海外旅行に行っていたことがあった。 その時ばかりはうちと小森家だけでの開催になってしまった。 総司は海外旅行から帰ってくるなりその事実にふてくされて、結局一か月くらいずっとその話を続けられた。総司の拗ねるポーズは持久戦だ。 「そうちゃん、ずっと機嫌悪かったよね」 「うん、だってあっくんもこずも、花火の話全然しようとしないじゃん」 「だって総司、嫌がるだろうから。梢と二人で黙ってたんだよ」 「それが逆に嫌なんだよ~」 可愛らしい声をあげて、総司が亜貴の肩に頭をぐりぐり押し付けているのが見えた。笑ってしまう。結局は見るに見かねた親たちが、もう一度花火の日をつくってくれた。あの日の総司と来たら、本当におかしかったものだ。 「総司、ずっと俺と梢の手つないでて、一回も花火しなかったよね」 「ふふ、おかしかったなあ。あんなにやりたがってたのに、そうちゃん、いざとなったらやらないんだもん」
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