4031人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
あの日の総司は、今日と同じように私たちの肩をぎゅっと掴んで、近づいた距離にある指先を強く握った。
記憶をなぞるように、総司が指先に触れる。その熱さに笑ってしまった。
「そうちゃんの手、あっついよ」
「うるさ~い」
「うわ、梢から手ぇ離して」
「あっくんはマジで、ずっとそればっか」
確かにそうだった。あの日の亜貴も同じ言葉を呟いていた。いつも、やさしい。
「言ってたね。『こずが花火できなくなっちゃうでしょ、俺だけで我慢して』って。あれ、可愛かったなあ」
くすくす笑いながら、当然のように総司がつなぎ合わせる指先を見つめた。亜貴と総司も同じように繋いでいる。亜貴は、かなり呆れた様子だけれど。
「そうそう。そういや、あっくん、いつの間にこずのこと梢って呼ぶようになったよなあ。なんで?」
何でもないことのように聞いている。問われた本人は小さく笑っているように見えた。
亜貴が私を梢と呼ぶようになったのは、中学のころからだったと思う。ただ、今でもたまに愛称で呼ばれるから、特に気にしたこともなかった。
「亜貴は、今でもたまーに、こずって呼んでくれてるよ」
「梢、それ黙ってて」
「えっ、やっぱ仲間外れ」
「え? なんで? 何も秘密ないよ?」
「いや、たぶん無意識に出てるから……、うわ、はずかしいな」
「ふぅん」
「そうちゃん、ふぅん? ってなに? 私にも教えて」
最初のコメントを投稿しよう!