花火のような恋が砕ける

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「なに? 俺にも教えて」 「梢、それは黙っておこうか」 「ストップ。あっくんは秘密を作りすぎ」 秘密にしたいんじゃなくて、亜貴は恥ずかしいのだと思う。だから、私と亜貴だけの記憶にしている。 あの日も夏だった。 幼い亜貴は、泣き虫だったと思う。総司よりも私よりもずっとびえびえ泣いて、いつも私に助けを求めてきていた。 亜貴にとっての泣ける場所なのだと思う気持ちがこじれて、私のこころに黒いシミを作った。好きにならないほうがおかしいと思う。 「うーん。じゃあ、亜貴」 「うん?」 「私があきちゃんって言わなくなった理由と、亜貴が私をこずって呼んじゃうときの理由? どっちなら聞かれても良いか選んでいいよ?」 意地悪に囁いたら、隣で総司が口笛を鳴らした。瞬間に亜貴が「口笛吹かない」と言って、細やかな笑いが起こる。 「こず、たまーに攻めるとこ、俺大好き」 「総司は他人事だと思って、自分だとめちゃくちゃ焦るくせに」 「今はあっくんのターンだからいいの」 「あーき? どうする?」 くすくす笑ったら、お手上げの亜貴が「あきちゃんの方で」と呟いた。よっぽど私に聞かれたくない秘密らしい。残念に思いながら、唇を開いた。
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