花火のような恋が砕ける

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「亜貴って、昔、すっごく可愛かったでしょ」 総司も亜貴も、女の子みたいな顔立ちだった。 とくに亜貴は、今もそうだけれど肌の色が白くて華奢に見えるから、小学生の頃はよく年頃の男の子にからかわれていたものだ。 総司はどんなにかわいい顔をしていても毎日外で遊んで真っ黒に肌を焼けさせていたし、常にどこかに傷を作るくらいパワフルな少年だった。 だから一度もその手のやっかみを受けなかったけれど、趣味が水泳で、ほとんど室内競技を極めていた亜貴は、肌も白いまま、すらりと背が高い綺麗な女の子みたいだった。 「おかまとか、あきちゃんとかって、からかわれてたっけ? 全然気にしてると思ってなかったわ」 「うん。そうちゃんがサッカーのクラブに行っちゃった日、二人の帰り道であきちゃんって呼んだら」 「呼んだら?」 その先の言葉は、もう全員がわかっていそうだった。 亜貴が珍しく、頭を掻いている。恥ずかしいのだろう。大人になった亜貴は、もう、あんなふうに振舞うこともないだろうから。 「大号泣しちゃったんだよね。『ちゃんって言わないで』って」 「あ~、言いそう」 「もうこの話終わって良い?」 「かわいいじゃん、あきちゃん。なぁ? こず」 「やめろ」 「ははは、それで、『こずには、ちゃん付けされたくない』って言われて、それからだよね」 「ふぅ~~ん。あっくん可愛いなあ」
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