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「そうそう、昔はすごく可愛かったよね」
「はいはい、俺の話はもう良いから」
「あっくん照れてんじゃん」
「はは、可愛い」
一番背の高い亜貴が、私と総司を見て、気恥ずかしそうにため息を吐いた。
「梢には呼ばれたくなかったんだよ。どうしても」
「はいはい、惚気ごちそうさま~」
ぱっと手が離れる。
花火が終わるみたいにあっけなく、一つが三つに分かれて、一歩前に出た総司に言葉が消えてしまった。
振り返って、にっこりと笑っている。
私たちはずっと三人だった。それ以外の生き方を知らなかった。どこにいても、誰と居ても、一番は三人だった。だから、私は亜貴を好きになったことを二人には絶対に言わないつもりだったし、きっとそのまま終わっていくのだとも、思っていた。
「ともちゃ~~ん、こっちで花火しよ~」
「おっ! みんな待っててくれたんだ!? 今行く!」
後ろに向けて大きく手を振っている姿を見て、シャボン玉がはじけたような心地が突き刺さる。
もう、ただの三人じゃない。
シャンプーのような清潔な香りに目が覚めた。朋美は当たり前のように総司の隣に走って行って、総司から、花火を受け取っている。
「梢ちゃん、亜貴君~! おいで!」
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