花火のような恋が砕ける

21/29

4030人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
声を返したら、亜貴の手が、垂れ下がったままの私の指先に触れて、つなぎ合わせてくる。恋人みたいな距離で、亜貴の瞳が揺れるのを見た。 「甘えたいときとか、たぶん、出てると思う」 「……から、言いたくなかっただけ」 さっくりと心臓のど真ん中に刺さって、息が止まりかけた。 まるで、まるで私が好きみたいな言い方をする。 瞬きして、亜貴が「あんま見ないで」と囁くのを聞いた。この世で一番好きな人が、私に甘えているのかと思うとたまらなく愛おしくて、みじめになった。 こんなに可愛らしく側にいてくれても、亜貴は私を好きには、なってくれないのか。 「ごめん、総司の前だと、俺の気持ちバレそうだから、言いたくなかった」 私の瞳を見て、亜貴が呟いた。その声の調子が胸元を抉っている。 別に甘ったるい言葉を期待したわけじゃない。好きになってくれることを期待したわけじゃない。 亜貴が好きな人のこともよくわかっている。総司にばれないように必死になっているくらい知っている。だからこれくらいで傷ついてはいけない。 震える息を殺して、小さく言葉を打つ練習をしている。大丈夫、大丈夫。呪文のように壊れかけの心臓で唱えて、唇を動かした。 「そっか。えらいね」 「うん?」
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4030人が本棚に入れています
本棚に追加