花火のような恋が砕ける

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亜貴が甘えるのは、いつだって朋美との関係に苦しんでいるときだけだ。 「くるしいこと我慢してる亜貴、えらい」 「……はは、うん」 繋がった指先で、亜貴の熱を感じている。 遠くから、二人が「はじめちゃうよ~」と叫んでいる声が聞こえた。また茶化されそうだと思うくせに、一歩も足が出なかった。 「梢も甘えていいよ」 「うん?」 「総司のこと、苦しいとき」 囁かれた言葉で、やっぱり朋美とのことで苦しんでいるときに呼ばれているのかと思い当たってしまう。 こんなに近くにいるのに、私のハートの片割れは、いつまで経っても埋まってくれない。 亜貴はもう、ずっと前から男の子だった。亜貴にとっての私が女の子じゃなかったとしても、ずっとそうだった。 「ありがとう」 罰を受けたい。 もう、最低だとなじられてしまいたい。こんなふうに優しくしてもらえる権利なんてない。最低だって言って、嫌われて、一人になってしまいたい。 そんなウソを心のどこかで呟いて、泣きそうな何かを奮い立たせていた。 「行こう」 逃げるように告げて、亜貴から手を離した。これ以上近くにいたら、泣き出して、亜貴を困らせただろう。 痛いのは、総司が好きだからじゃない。 亜貴が好きでたまらないからだ。 神社の絵馬なんて叶わなかった。一年で遂げられなかったから、罰ゲームを受けているのかもしれない。好きな人のそばで、ゆるやかに心を殺していくゲーム。 くるしい体を引きずって亜貴から離れる。まっすぐに二人の方へ歩いて、足を止めた。
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