花火のような恋が砕ける

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「梢ちゃん?」 「うん?」 「どした?」 「ううん、どれやろうかなって悩んでるの」 「あ、こずには、これおすすめ」 総司から手渡されて、にっこりと笑った。 亜貴が後ろで立ち尽くしている。当然のように朋美がいくつかの花火を引っ掴んで、亜貴のもとへと走った。後ろ姿を見つめている。 「亜貴君はこれね」 「ああ、うん。朋美ちゃんありがとう」 「いえいえ~、はやくやろ!」 いつか亜貴のやさしい初恋が実ったりするのだろうか。 もうわからない。 実った時、私も総司も、きっとひどく傷つく。だから亜貴は、言わないまま、あの場で立ち尽くしている。 亜貴の恋心が壊れてしまいそうで、いつもおそろしくなる。でもその時に私が一番そばにいれば、亜貴は私を――。 きらきらひかる、花火がうつくしかった。 朋美と総司はゲラゲラ笑って、ときおりお酒を飲んだりして、打ち上げ花火に興じたり、かと思えば手持ち花火を何本も持ってきて、走り回ったりしていた。 私も亜貴もけらけら笑って、4人の世界は、どこまでも幸福に広がっている。――本当に? 大量に買い込んだ花火は、一時間経ってもまだ半分残っている。 呆れかえって、放置されている焼き台のそばの長椅子に腰かけた。 総司と朋美が走り回っている。あの調子で大丈夫だろうか。さすがに飲みすぎだと思う。とくに朋美は、意外にお酒に弱かったりする。 さらに、まだまだ冷蔵庫にお酒を放り込んできていたことを思い返して苦笑してしまった。
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