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残ったら、総司の部屋に持っていけばいいと言っていたけれど、それにしても多すぎると思う。
私もそんなに強くないから、あまり飲まないつもりでいる。総司にお願いされたら断れないのだけれど、今日は亜貴がいるから、無理強いされることもない。
「隣いい?」
思考に触れた人が立っていた。
横を見れば、優しく微笑まれる。ようやく感情の折り合いがついたところだった。苦笑していた顔をコントロールして「どうぞ」と囁き返す。
亜貴の姿が見えないと思っていたら、ミネラルウォーターを持ってきてくれていたみたいだ。
「気が利く」
「いや、二人あのまま行ったら、明日帰れなくなりそうだしね」
「たしかに。もう、浮かれすぎだよ」
普通に会話できていることに心底安堵している。亜貴にこの感情の在り所を暴かれたら、全てが終わってしまうだろうから。
「こんなに花火で笑うとは思わなかったなあ。ほんとうにたのしかった」
「そうだね。でも、俺は梢と二人の花火大会も楽しかったよ?」
ずるい言い方だなあ。
もう、結局好きで嫌になってしまう。横に腰かけた亜貴が、拳一つ分隣にいる。
恋人と言うよりは、少し他人に近いのだろうか。その距離を測り続けている。どうやったって私を好きには、なってくれないと知っているのに。
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