4029人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
軽い声に、瞼をぎゅっと瞑った。
4人でいたいなら、ずっとそうしていればいい。簡単な答えだ。きっと、私が亜貴を好きになっていなければ、笑顔で頷けた。
一緒に居よう。ずっとそばにいよう。二人の愛を見守って居よう。きっと本気で囁けただろう。
「来年も、再来年も」
「うん?」
「亜貴は、ずっと、朋ちゃんのことが、すき、なのかなあ」
恐れるように吐いた言葉は、きっと亜貴の胸に突き刺さっただろう。
何度訊いても、口から出た途端に後悔する。
今のなし、と言いたいのに、亜貴が丁寧に悩む姿を見たら、もう、声は出なかった。
「亜貴、」
「そうだね」
丁寧なささやきだった。
嘘一つない瞳は私を見つめて、くるしまぎれに笑った。聞いてはいけない言葉だった。きっと私にとっても亜貴にとっても、ずっと不都合な言葉だった。
「たぶん、これからもずっと、好きだと思う」
恐ろしい予感を笑ってあげたかった。
大丈夫だよ。そんなわけない。どこかできっとうっかり人を好きになって「あのとき、総司の彼女がすきだった」と笑って言えるようになるよって、言ってあげたかった。
「梢は?」
「うん?」
「梢は、どうなの。……総司のこと」
でも、無理だ。
亜貴の声で、冷たい心臓から、凍った血液が流れだしてくる。全身が冷たくなったら、泣きたい気持ちのまま、本心が唇から飛び出ていた。
最初のコメントを投稿しよう!