花火のような恋が砕ける

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「昔っから、花火大好きだったよね」 「ねずみ花火とか、覚えてる?」 「あれでぎゃあぎゃあ騒いだよね」 「怖くて私が泣いたら、そうちゃんが助けに来てくれて」 「そうちゃんって、かっこいいとこ、あるんだよね」 「だから、」 「こず」 椅子についていた指先に、やんわりと熱が重なった。 誰の指先かなんて、見なくてもわかる。やさしい問いかけに似た声は、私の言葉を壊すには十分すぎる。 「もう、いいよ」 甘えるときに出る愛称だと言った。でも、今の亜貴は、甘えじゃなくて、甘やかそうとしている声だったように思う。 黙り込んだまま、ただ二人で景色を眺めている。繋がれた指先にこもった力は、亜貴のくるしみのありようみたいだ。常に掴まれ続けている心臓の痛みのような。 総司と朋美は、相変わらずはしゃぎまわっていた。ぐるぐる鬼ごっこみたいに走り回って、光を振り回している。そのうち朋美が転びかけて、総司がしっかりと抱きとめた。 「うわ、危なっかしい」 「ほんとうだ」 思わず声が出た私に、亜貴が言葉を返した。 朋美が転びかける一瞬、亜貴の指先に力がこもったのを知っている。知らない二人だけが、至近距離で目を合わせていた。
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