朝焼けは眩く嘯く

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「亜貴」 呼んでも起きないことを確認して、亜貴の体にタオルをかけている。亜貴は背が高いから、少し足が出てしまっている。小さく笑って、自分が羽織っている上着を亜貴の足元に掛けた。 時刻は午前5時。 すでに、朝日が顔を覗かせていることに気付いて、玄関から外へと足を踏み出した。 微かに眠気が襲い掛かっていたはずが、海へと歩いているうちに、忘れ去ってしまった。特に意味はない。ただ、少し一人になってみたいような気がしていた。 あの時のキスの意味を考えている。亜貴は、私に触れた唇で、何を囁くつもりだったのだろう。 目の前に揺蕩う海水に触れて、冷たさに指先が引っ込んだ。結局聞けないまま、夜が明けてしまった。 期待するだけ裏切られるから、私の思うような答えがないことだけ、わかっている。 「みーっけた」 「わ」 水面に映る自分の後ろに、明るい髪の毛の男が映った。振り返って笑ってしまう。 「もう寝たんじゃなかったの?」 「こず置いて寝れるわけないじゃん。散歩? 俺も混ぜて」 総司はあれだけ飲んでも平常運転らしい。そのタフさに感服してしまった。当たり前に隣にしゃがみこんで私の瞳を笑った。当然のように、私の肩に総司の上着がかけられていた。 「眠れねーの?」 「うーん、まあそんな感じ」 「昨日、あっくんとチューしてたろ」
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