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笑いながら勝手に私の足に触れた。総司は私が履いているサンダルを勝手に脱がせて、白いコンクリートの上に置いた。同じように自分も裸足になって、階段の下の海に足を浸している。
「気持ちいいよ」
「もう。タオルないんだよ?」
「いいよ。乾いたら帰ろ」
自由な提案に笑って、総司の横に足を下した。ひんやりと水の冷たさに包まれる。隣で総司がばたばたと足を動かして、小さな飛沫を浮き上がらせた。
「うわ、濡れる」
「昨日も濡れたじゃん」
「そう、いっつもそうちゃんのせいだよ」
「俺のせいか~」
とぼけたように笑いながら、総司がわざと私の足に水を飛ばしてくる。反撃するように返したら、ついには笑い声がはじけて止まらなくなった。
私と総司はいつも張り合ってばかりだ。
そのくせに、一緒でなければ少し不安で、いつも隣で手を繋いでいた。総司に特別な人がいることを、まだ理解しきれていない節がある。
「元気出た?」
「……うん?」
ひとしきり笑った総司が、波に隠すように囁いた。声が綺麗に届いてしまう。
振り向いたら、総司も同じようにこちらを見た。いつかの夏にも見た、いつもと同じ優しい笑みだった。
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