朝焼けは眩く嘯く

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亜貴の心が救われたらいいのに。その瞬間に私の長ったらしい初恋が終わる。半身がちぎれるような思いをするのだと予感していた。 「わかった。じゃあもう聞かないから。泣きそうな顔すんなよ~」 「ええ? 泣きそう?」 「うん。こず、泣く前絶対親指握るでしょ」 「うっそ。気づかなかった」 泣きそうだったのか。もう、つねにこういう感覚ばかりが心臓の上に乗っている。最近の自分が酷く不安定になっていることは、知っていた。 おわりが、近づいているのかもしれない。 「聞かないけど、つらかったら、こっそり言えよ~?」 「はは、そうちゃん、悔しいけどやっぱり大好きだなあ」 総司が、当たり前に肩を抱いてくれる。いつも一緒だ。夕焼けを見た公園も、両親に怒られて逃げ出した夜も、ずっと一緒だった。 亜貴と、総司と私で並んで、いつも総司が肩を抱きしめてくれていた。やさしい記憶だ。忘れたくない。大切な思い出だ。 けれど、そう遠くないいつか。 いつか、自分が壊してしまう気がする。 「まあ、普通に俺の知らないとこで二人が仲良くなっていくの妬けるじゃん」 「なにそれ」 「二人はもう大人の関係? になっちゃったのかなあ~って、ちょっとさみしいんだよ」
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