朝焼けは眩く嘯く

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「覚えてないんだって、こず。残念だったなあ」 「……そうちゃん」 「え、なに。俺何かしでかした?」 「いーや?」 総司は、あくまでも言ってほしくない私に免じてくれるらしい。 苦笑してしまった。 亜貴は相変わらず不安げな顔をしている。口にしたら、亜貴はきっと後悔して、私に謝ったりするのだろう。ほとんど衝動のような唇だったから。 「何でもないよ? それよりも、探しに来てくれたの?」 「……うん。部屋にいなかったから。総司もいるとは思ってなかった」 「はいはい、お邪魔虫は消えますよっと」 「そうちゃん、そういう……」 「はは、うそうそ。俺もともちゃんの様子見に行きたいし、こずのお守りはあっくんにバトンタッチね」 言葉とともに、私にかかっていた上着を攫って、総司は階段を昇って行ってしまう。茫然と見つめて、取り残された亜貴と目が合った。 「邪魔した?」 亜貴の声に心音が軋んでしまう。 朝から心臓に悪いなあ。苦笑して首を横に振った。総司と同じように立ち上がって、濡れたままの足をサンダルにつっかける。 総司にはひどく気を遣わせてしまった気がする。立ち上がったら、亜貴が私の前に上着を差し出してくれていた。
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