朝焼けは眩く嘯く

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「はは、子守歌でも歌おうか?」 「あ、でた。亜貴のいじわる」 くすくす笑って言えば、亜貴がきょとんと瞳を丸めて、「意地悪のつもりじゃなかったんだけど」と苦笑した。どうやら本気だったらしい。 笑いながら二階への階段へと足を踏み入れて、当然のように後ろからついてきている亜貴を振り返った。 「亜貴も来るの?」 「うん?」 はぐらかされている気がする。思っている間に部屋にたどり着いて、立派なベッドの前で立ち止まった。同室なのだから亜貴も当たり前に部屋に入って、扉を閉じられた。 二人になった。意味もなく思って、振り返った亜貴と視線を合わせている。 「子守歌は何が良い?」 「もう、亜貴。ふざけてる」 「はは、ごめんごめん。ほら、横になって」 「監視しなくても寝ますってば」 押し込むようにベッドに乗せられる。仕方なく布団の中に足を差し入れて横になれば、亜貴は優しく笑ってから、同じようにベッドに入ってきた。 初めからそうするつもりだったのか。動揺している間に亜貴の腕に体が掴まれる。 「あき、」 「俺も寝る」 有無を言わせず、抱き寄せられた。いつもの亜貴の部屋で眠っているときのように扱われて、声が消えてしまった。亜貴にとっては大したことじゃない。気にするべきことでもない。わかっている。
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