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「あき、ねるの?」
「うん。まだ少し頭痛い」
「ええ、お水持ってくるよ」
「ダメ」
亜貴の胸に額がぶつかる。
片腕で寄せられて、動けなくなった。微かに、いつもとは違うシャンプーの匂いと、亜貴の匂いが混じっている。視界がぐちゃぐちゃになってしまいそうだった。
「あき?」
「梢も寝て」
「うん、でも……」
「俺、やっぱ何かした?」
核心を突く言葉だった。亜貴は、私のつむじに縋り付くように頬を触れさせて、囁いている。わずかに声が遅れてから、「何もないよ」と返していた。
「さっき、総司と居たのに、邪魔したから?」
「うん?」
「なんか、避けられてる気がした」
聡いから、嫌だ。
隠すように笑い声を打ったら、亜貴の指先が顎を掬うように伸びた。至近距離で目が合う。真意を見るような瞳に見据えられて、慌てて亜貴の胸に縋り付いた。
「避けてないよ」
「……本当?」
亜貴の胸の音が聞こえる気がする。聞いてみたくて耳を寄せたら、反対の耳元で、亜貴の声が鳴った。
「総司と何話してたの」
「うーん? 何、だったかなあ」
亜貴との付き合いのことだとは言えずに、押し黙っている。何も言わずにいれば、亜貴の腕の拘束はじわじわと強まって、ほとんど抱きしめられているみたいになっていた。
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