さびしさの輪郭たち

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車一つない道は長閑にまっすぐ伸びていて、このままどこか知らない世界にたどり着いてしまいそうだ。 4人なら、それでもいいかもしれない。 明日も別々の予定があるはずの3人を引き摺って良いわけがないのに、ただ一人そんなことを思っていた。 帰りたくないのは、私もだ。 「あはは、行きたいな。三人が通ってた学校とか行きたい」 小中学校は、ほとんどエスカレーター式で、通っているメンバーも同じだった。高校生になってようやく知らない同世代に出会ったとき、私と亜貴と総司の関係が、そこまで普通のものではないのだと知った。女の子に微妙な目で見られた記憶がある。 一年の頃は三人ともクラスが違ったから、私を迎えに来る二人の存在は本当に異質だったのだと思う。 とくに亜貴は私と同じ帰宅部だったから、亜貴のことで変なやっかみを受けることも多かった。 二人の帰路で、何度も亜貴が遊びにつれて行ってくれた。あれは、亜貴なりに私を励ましてくれていたのだと思う。 やさしい記憶だった。亜貴が好きなのだと気づいてしまうきっかけの日々でもあった。 「マジで何もないよね」 総司の言葉に頷く。田舎というには少し都会に近くて、都会というにはうらぶれている。そういう街だった。
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