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器用にポケットから携帯を取り出しながら運転している。後ろへと差し出した手に朋美が触れて、大切そうに受け取ったのを茫然と見つめていた。
「うわ、待って。恥ずかしい」
亜貴と朋美の指先が離れたところで思考能力が戻ってくる。慌てて朋美の指を追ったら、亜貴の携帯が隠されてしまった。
朋美と見つめ合って、にっと笑われる。嫌な予感に亜貴を振り返ったら、少しだけ申し訳なさそうな目が私を見た。
「亜貴くん、パスワード何!?」
「あー、俺知ってる」
亜貴に聞いたくせに、なぜか総司から返事が来た。
ぎょっとしているうちに、総司が亜貴のパスワードを解いてしまう。友人に簡単に個人情報を握らせている亜貴に驚いて、また亜貴の横顔をまじまじと見つめてしまった。
「亜貴、何でパスワードそうちゃんに知られてるの?」
「ずっと変えてないから?」
「ええ、変えたほうがいいよ?」
「うーん、他に使いたい数字がないからなあ」
のんびりした声にさすがに笑ってしまった。総司が知っているくらいだから、本当に長い間使っているのだろう。
亜貴の誕生日だろうか。問いかけようとして、後ろから声が鳴った。
「ぎゃ~! か、か、かわいい!!」
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