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「そもそもあっくんのデータフォルダ、全然データないから」
「うわ、マジだ。亜貴くん、どんな人生送ったら、こんなに空っぽなフォルダになるの?」
「あれ、なんか哀れまれてる?」
笑った亜貴が、車を右折させている。ようやくまっすぐな道を抜けたようだった。
曲は相変わらず夏っぽくて、しかも昨日からまだ一度も聴いたことのないものだ。総司の俺的最高サマーソングはかなり多いらしい。
「亜貴って全然カメラ使わないよね」
「そうだね。なんか、撮ってる時間がもったいなくて」
特に意味なく呟いた言葉に、亜貴が声を返してくれる。それもまた亜貴らしい理由だった。ちらりとこちらを見ている。目が合って小さく微笑まれた。
「しかもあっくんが撮ったら全部こずになりそう」
「言えてる。このフォルダもほとんど梢ちゃんじゃん。私のスマホに転送しよ」
「うわ、やめてやめて。ってかどうして亜貴の携帯に私がいるの」
「俺が送ったからに決まってんじゃん」
「うわ~! これ! これ可愛い。学校祭? けしからん。似合いすぎててけしからん」
総司は亜貴とは対照的に写真が好きだ。
一眼を購入しているほどだから、被写体に引っ張られることも多かった。その写真の数々を亜貴に送りつけていたのだとすると頷ける。
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