さびしさの輪郭たち

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「3年のときのやつ。俺とこずがクラス一緒で、亜貴だけ違ったから送ってやったんだよ。可愛くね?」 「え、やだ。消して……! それは本当に恥ずかしい」 「なんだよ。可愛いじゃん。この恥ずかしそうなのがまた乙だよなあ」 「そうちゃん!」 思い当たる節がありすぎて冷や汗が出た。高3の学校祭は散々だった。 服飾の専門学校に通学することが決まっている友人――栞那(かんな)になぜか気に入られて、部活の手伝いをしてほしいと言われたのが始まりだった。 とくに考えなく頷いたら、あっという間にショーモデルの真似事をさせられて、あの衣装はいまだに部屋に置かれている。特別背が高いわけでもないから、なぜあんなに熱烈なラブコールを受けたのかよくわからないままだ。 「イメージは天使だね?」 「うわあー! 朋ちゃん、もう、もう良いから……!」 「そうそう。あと小悪魔の方もあって……」 「そうちゃん!」 「あ、そっちも多分、入ってる」 「亜貴!?」 終始叫んでいる私に、三人の笑い声が鳴った。 どう足掻いても逃げられなさそうで閉口してしまう。分が悪い。昨日は亜貴が散々攻められていたから、今日は私の番なのかもしれない。 諦めてため息を吐いたら、車が停められた。
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