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一つひとつに傷ついている間に、私たちのこころは、すこしでも強くなれているのだろうか。
亜貴が見つめる先を振り返って、同じように体が固まってしまった。
建物の先に花畑が広がっている。一面ガラス張りだから、その景色が良く見えていた。
夏の花畑に、影が二つ。一つになって、ふっと離れる。
二人は小さく笑って、手を繋いでいる。
付き合っているのだから、何一つおかしなことはない。見て見ぬふりをして、通り過ぎればいい。
立ち止まったまま、振り返った総司と目が合った。こちらを見て笑っている。手を振って、私たちを呼んでいた。
凍り付いてしまいそうだ。
「……呼んでる、ね」
囁くような声が出た。亜貴は、どんな顔をしているのだろう。振り返るのが恐ろしかった。
4人であんなに普通に話せるのに、私たちはどこかの拍子で躓いてしまう。
当然のように二人は手を繋いでいて、総司も朋美も、照れることなく笑っている。その清々しさにやられて倒れてしまいそうだ。
ブリキのような足取りで歩いている。亜貴が後ろからついてきているのか不安になるくらい、耳鳴りがうるさい気がした。
「あっくん、こず、4人で写真撮ろう~!」
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