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茶化した総司の声に、言葉が引きつった。
何の悪意もない声にこそ、胸が引きちぎられそうになる。亜貴の表情が一瞬歪んだのが見えて、なおさら声が出なくなってしまう。
もう、やめてほしい。
「え、なになに?」
底抜けに明るい声が鳴った。この場に一番いてほしくない人だった。ソプラノが風に乗って、総司が口を開いてしまう。誰一人止められないまま、残酷な言葉が空気を揺らしてしまう。
「ああ、小学生のころ埋めたタイプカプセルの手紙に、亜貴が『こずと両想いになれますように』って入れた説を話してた」
「うわあ、亜貴くんっぽいなあ」
朋美の言葉に、必死で笑みを浮かべていた。
亜貴らしさとは何だろう。言葉にならなくて、ただ笑って見せていた。総司が「今度帰った時にでも掘り返そうか」と言ったとき、何も言えない私の横で、亜貴が苦笑しながら「大学卒業とかの節目が良いんじゃない」と言った。
曖昧な回避にこころが砕けそうになった。
亜貴は私を好きにならない。好きになってはくれない。
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