さびしさの輪郭たち

13/19

4023人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
あっという間だったと言ったら、何とも味気ない。 車に乗っていただけなのに疲労感があって、目が回りそうだった。総司と朋美を下ろして、二人で車を返しに行く。 あの二人がいなくなった瞬間に音がなくなった車内で、さびしさが鳴りそうだと思った。 とうに夕方が、世界を支配している。 事務的なアナウンスに従って二人で車から降りる。たった二人分の荷物を持って地面に降り立ったら、すべての夢から醒めてしまったような心地がした。 「亜貴、運転お疲れ様」 「ありがとう。梢、持つよ」 「大丈夫だよ」 大丈夫だと言ったのに、亜貴は私の荷物を簡単に引き受けてしまった。今日一日で一番疲れているだろうに、疲れなんて見せないように笑っている。 何度目かの苦しみが襲い掛かった。どうして亜貴は、やさしいんだろう。 「今日は疲れちゃったでしょ。私は全然元気だから」 亜貴と私の家の間くらいにある店だから、すぐに分岐点についてしまう。立ち止まって荷物を受け取ろうと手を差し出したら、亜貴が眉を下げたのが見えた。 「亜貴?」 「うち、くる?」 誘っておきながら、すでに私の手を掴んでいた。冷えた指先から、亜貴のかなしみが伝わってきてしまいそうだと思った。
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4023人が本棚に入れています
本棚に追加