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好きな人に、勘違いされ続けている。亜貴は、ずっと、隠しながら生きている。
罪悪感ごと膨れ上がった感情は、どうやって消化できるのだろう。同じだからわかる。どうしようもなく、痛んだままの心音で壊れてしまいそうな気分になる時がある。
「言い方間違えた」
「あき」
「うち来て。……もう少し、そばにいてほしい」
ごめんと言った亜貴が私の手を握って歩き出した。拒否する力なんてない。
ただ付き従って、何度か来たアパートに吸い込まれていく。
亜貴の心を救う何かでありたいけれど、私にできることなんて何もない。ふいに、この関係を絶てば、総司も朋美も、亜貴の本心に気付いてくれるのだろうかと思ってしまう。
もう何度も繰り返したシミュレーションに、唇を噛みたくなる。できないくせに。
「亜貴、」
玄関で立ち止まってしまった亜貴の背中を見つめている。呼べば、表情を失った亜貴が私を見つめた。
ずっと笑っていられるわけがない。こんなにも苦しいなら、怒ったって良い。本気で思っている私がいることだけでも、気付いてくれたらいいのに。
「なにか作るよ」
励まし方なんて知らない。どうしようもなくて、亜貴の頬に触れたら、亜貴が私の手を握って頷いた。
ただそれだけのことに安堵したりする。
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