さびしさの輪郭たち

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私は、どうしてこんなにも優しい人に平気で嘘を吐いているのだろう。どうしようもなく重たい罪の匂いに、勝手に泣き出してしまいたくなった。 しんどい。くるしい。痛い。泣いてしまいそうだ。けれど、全部私が悪い。 「……大丈夫、だよ」 「そっか」 「あきは、もう、大丈夫?」 大丈夫じゃないことくらい知っている。私の言葉に、亜貴が額を肩に押し付けるのを感じた。 くるしんでいるとわかったら、たまらなく痛くなる。 どうして私は亜貴を好きになってしまったのだろう。自分の気持ちが邪魔をして、亜貴を助けられないまま立っている。このままではだめになるとわかっている。 嘘はいつか明るみに出て、絶対に全てを傷つけてしまう。誰よりも傷つけたくない人が、震える息を吐いたのを聞いた。 こんな残酷な問いを立てて良い訳がなかった。謝ろうと口を開きかけて、聞こえてきた言葉に、ついに黙り込んでしまう。 「大丈夫って言ったら、梢は、俺から離れていくの?」 受け入れがたい言葉を囁くような音だった。 壮絶なくるしみが背中から押し寄せて、鼻の奥が痛みを訴えかけてくる。涙が出てしまいそうだ。どうにかやり込めたくて、必死に止まりかけの呼吸を繋いでいる。 どうして私は、最低なのか。
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