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「あ、き」
もうやめようと言ったら、亜貴はきっと、絶望した顔を押し込めて、「巻き込んでごめんね」と囁くのだろう。想像して、痛みで吐きそうになった。
どこにも行けない。どこにもたどり着けない。ただこの永遠のくるしみの庭で、二人立ち尽くしている。
「ごめん、まだ、きつい。ごめん、自由にして、あげたいのに」
氷みたいに冷たい声が、泣きそうに震えている気がした。縋り付く腕に、指先が重なる。
亜貴のくるしみを少しでも軽くできるのなら、もう、悪者だって良い。結局いつも、同じことばかりを思っている。ただ亜貴が好きなだけ。
「そばにいる」
囁いたら、かなしい抱擁が、体中を襲った。強く抱きしめられて、泣けない瞳を閉じる。
「ずっといるよ」
「……総司のどこが好きなの」
まるで、傷つけるような言葉だった。朋美の好きな人の魅力を知ろうと思っているのだろうか。痛々しい自傷に突き刺される。
「教えて。どうして好きになったの?」
好きな人に好きな人を問われるくるしみなんて、亜貴は知らなければ良いと思う。真剣に思っている。痛すぎて、倒れてしまいたい気分だ。
「どうして好きになったのかなんて、聞かないで」
「前も言ってたね。どうして?」
「わからないくらいに、全部好きだから」
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