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「そっかあ。……初恋って、しぶといね」
慰めるような言葉を打ちながら、その恋が永遠に叶わないまま、消え落ちていくことを願っている自分が嫌いだった。
亜貴を思う自分は汚い。綺麗じゃない。
人を好きになるということは、全然綺麗なことではないのだと知った。
自嘲をひた隠して笑っている。
震えた指先が、簡単に火の種を落下させてしまった。呆気ない夏だ。
ぬるい風に攫われて、当然のように熱を失っていく。いつかそんなものみたいに、綺麗に固まって、冷たくなってしまうようになるのだろうか。触れても痛くないくらいの温度に変わって、過去になって行けるのだろうか。
「……落ちちゃったね」
私のほうを見て、亜貴が小さく囁いた。
隣にしゃがみこんだまま、私の目を見据えている。視界の端で、亜貴の線香花火が終わった。夏の終わりみたいに、恋の期限のように、あっけなく、うら寂しい匂いがする。そんな気がした。
「亜貴、」
呼んだら、亜貴がかなしそうに唇を揺らした。その唇の寂しさにさえ、苦しい予感が鳴ってしまった。
聞かれる言葉に、何度謝って泣き叫んで、後悔したらいいのだろう。
私は最低だ。最低のまま、この場に縋り付いている。
「総司が好き?」
何度聞いても息が止まってしまいそうな問いかけだ。
亜貴は、私の嘘を信じている。
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