消えてよ、かなしい愛の匂い

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素肌が晒されているところに、いくつも口づけてくれる。まるで私の全身が愛おしいみたいに大切にされて、おかしくなりそうだった。 声を上げないようにと唇を押さえている指先に、亜貴のキスが降りかかってくる。 優しい温度に胸が鳴って、言い知れない感覚が背筋に滞留した。 「すき」 耳元に囁いて、耳を食まれる。触れたことのない感触に体が反応して、高い声が漏れた。また必死で口元を押さえれば、やんわりと手を諫められる。 「声、聴きたい」 ひどく汗をかいている気がした。 額を何かが流れて、亜貴がその皮膚に口づける。あまったるい匂いに視界がちかちかしていた。手で押さえたまま首を横に振った。 私は朋美じゃない。朋美みたいな声や反応なんて、知りもしない。必死でごまかしている。亜貴が触れるのは私じゃない。 「お願い、聴きたい」 懇願のような音に、ほとほと参ってしまった。 私ばかりが乱されている。着ていたフロントボタンのサマーニットはすでにすべて開かれていて、亜貴の手がやんわりと触れている。 暴力的な視界に泣きたくなって、もう一度首を横に振った。 亜貴の愛が、こんなにあつくるしいなんて知らない。知っていたら、触れようと思わなかっただろう。その情熱で火傷してしまう。
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