消えてよ、かなしい愛の匂い

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「好き……、好きだ。好きだよ」 「ちゃんと気持ちよくなってくれてるか、聴かせて」 意地悪なことを言う人だと思う。 汗ばんだ背中に手を差し入れて、簡単に下着の留め具を剥がしてしまう。どうしてそんなことができるのだろう。ぐるぐる回って、結局わからないまま亜貴を見つめていた。 触れられると、魚みたいに体が痙攣してしまいそうだ。私の反応に亜貴が小さく笑って、頭を撫でる。 安心させるみたいな指先に、愛されているような錯覚を引き起こした。胸の奥がひりひりと焼けつくように痛む。 どこかで私は、これが夢だと、わかっている。だから、どこまでも痛くてくるしい。 指先で、唇で触れて、震える体を確かめている。亜貴の丁寧な愛し方に、体中があつくなった。 もうやめてと言いたくなって、ゆれる視界の中、亜貴の腕にすがっている。 指先に力を籠めたら、へその下に触れかけていた亜貴の顔が持ち上がった。軽い気持ちで言って良いわけがなかった。こんなふうにされたら、誰だって勘違いする。 「怖い?」 誰よりも大切そうに囁かれて、精いっぱい首を横に振った。怖いのは亜貴じゃない。 もっとずっと深みに嵌って、壊れてしまいそうな自分自身だ。 頑なに声を出さない私に、亜貴が困ったような顔をしている。いつも、総司とふざける私を見つめるような優しい瞳だった。
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