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亜貴のシャツに額を擦らせて、最後までの時間をひっそりと指折り数えている。
亜貴はかっこいい。素敵だ。優しくて、逞しいところがあって、いつも頼れる人だと思う。そういうスーパーマンみたいな人だから好きになったわけではないだろうけれど、それでも、こんなにも素敵な人を嘘で縛りつけて良い理由にはならない。
「亜貴、そばから離れられなくて、ごめんね」
本当は、亜貴が好きだ。誰よりも、何よりも愛おしく思っている。
誰にも渡したくなくて、駄々をこねくり回しているだけだ。好きなだけ亜貴に甘えるように肩を借りて、亜貴の両腕が背中に回ったら、世界の美しさに感謝したくなったり、残酷さに絶望を感じたりしてしまう。
「ぜんぜん、亜貴離れ、できてないね」
「もう、だまって」
たまらなく苦しい声が聞こえた。耳元に囁かれて、息が止まってしまう。
私たちの関係を何と言うのだろう。どんな言葉で表現するのだろう。
ラベリングされたところで、永遠の苦しみが消えるわけではないことくらい知っている。それでも誰かに教えてほしかった。
この、先のない宵闇の底のような感情に、行きつく場所などあるのだろうか。
「あき」
呼んだら、どうしようもなく声が震えていた。好きで、好きだけでどうしようもないような音の声が響いた。
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