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もう、20年も何も起こせなかった私じゃなくて、朋美のような魅力的な女の子に亜貴が惹かれたって、文句なんて言う筋合いもない。
「じゃあ、染めてみようかな?」
「え? マジで?」
大げさなくらいに驚いてくれる。その顔に笑おうとして、前から衝撃がぶつかってきた。
朋美がこちらの話も聞いていたらしい。茶化しを入れるように私に抱き着いて、総司のほうを見た。
「ソージ! それはマジでやだ。梢ちゃん、もし染めるなら私と一緒にしよ?」
「ともちゃん、こずに引っ付きすぎ」
「女同士だからいいの~。ソージは幼馴染でも男だもんね、ドンマイ」
「は~ん? 俺の愛は男女の壁を超えるからな?」
「なになに? ソージが性転換する話?」
「ちがうっつーの、こずが髪染める話」
「梢、染めちゃうの?」
相変わらずグラスを拭いている亜貴が、じっと私を見つめている。
ついさっきまで二人だった空間は、すでにうるさくにぎわっている。どちらかというと、ぽつぽつと会話を続けている私と亜貴は、総司と朋美の前では言葉が少なくなる。
久しぶりに声をかけられたことに気付いて、頬が勝手に笑っていることにすら、泣き出したくなる。
私はどうかしている。
「うーん、一回くらい、とは思うけど」
「そうなんだ。俺は結構、梢の色好きだけどなあ」
「あはは、ありがとう」
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