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亜貴の言葉に、一喜一憂しない。もう、絶対にしない。
心の底で何度も詠唱しているのに、慣れてくれない。亜貴がそう言ってくれるならば、もう一生このままで良いとさえ思えてしまう。亜貴の一言で簡単に世界が変わる。
「俺も好きだけど、こずは一旦俺と一緒のカラーリングにすんの」
「総司。梢のこと困らせるのは良くないよ」
「えっ!? あっくんにはそう見えた? こず、困ってんの!?」
「うーん?」
「梢ちゃん、今のは困ってるって言ってオッケーなやつだから」
「あ、そう? じゃあ、ちょっと困ってるかも?」
「はい、梢ちゃん困らせたソージアウトー。罰としてラウンドね」
「いやいや、理不尽すぎだし!」
「はいはい、仕方ないから朋美先輩がついていったげよう」
「いや、ええー? 俺ラウンド戻ってきたばっかで……」
「はいはい、良いから行く! それじゃ、亜貴くんと梢ちゃんは引き続き洗浄よろしく~」
嵐のように現れて去って行ってしまった。
一瞬ぽかんとしたまま、亜貴と目が合った。少しの間見つめて、小さく笑いあってしまう。
朋美には、私のかなしい初恋が知られてしまっているような気がする。そうでなければ良いと思うけれど、たまに強引に二人にされる時があるから、もうごまかしきれないかもしれない。
もしも、亜貴が、朋美のことを好きだったとしたら、こんなに残酷なことはない。
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