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「何それ?」
「うん? 何だろう。俺だけ置いて行かれそうで焦ってる? って感じ?」
「疑問形?」
「うん、今更、結構恥ずかしいこと言った気がしてきた」
「俺の知ってるこずえが減っちゃいそうで、嫌?」
「うわ、忘れて」
陶器みたいに荒れのないきめ細やかな肌が、薄っすら赤らんでいる。
小さく笑って、ようやく呼吸のペースを取り戻した。
亜貴の言葉に意味なんてない。幼稚園児のころとか、小学生のときと同じ気持ちで囁かれている。わかっているから、勘違いしてはいけない。わかっているのに、勘違いしそうだから言い聞かせているだけだ。
「減っちゃいそう?」
「あー、もう。梢」
「ふふ、だって可愛いんだもん」
ふざけていないと、それがどういう意味なのかどこまでも探って、困らせたくなってしまう。頬を掻いている亜貴の脇腹を肘でつついて、もう一度亜貴の瞳を見つめた。
「いつも一緒じゃん。置いてなんていかないよ?」
「……そう?」
「なんで疑ってるの~」
追いかけているのはいつも私の方だ。だから、置いてなんて行けるわけがない。いつだって私の目線の先に存在しているのが小森亜貴だから。
「じゃあ髪も染めない?」
「え? うーん、染めない、かな」
「ふぅん」
「ふぅんって?」
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