束の間の箱庭

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「あっくん、こず、1年おめでと~!」 にへらと笑って、私の前にアイスを差し出してきた。男はなおも嬉しそうに笑って「こずの好きなやつだぞ~」と言った。 平穏を絵に描いたような男は、同い歳とは思えないほどに甘ったるい顔をしている。実際に大学3年には見られないことが多いことを、総司はコンプレックスにしていた。 「ありがとう、そうちゃんもおめでとう」 努めて声のトーンをあげた。総司は気づくはずもなく笑っている。「ありがと~」と頬をいっそう緩めて、私の隣に座っている男の前にも同じパッケージを置いた。 「こっちがあっくんの」 「……あー、ありがとう。照れるなあ」 総司に負けず劣らずの笑みを浮かべた男が、綺麗に一呼吸おいてから、ゆっくりと言葉を擦らせた。酷く丁寧な音だ。 振り返って、男の瞳を見つめてしまう。 「亜貴(あき)もこれ好きだったっけ?」 「うん、(こずえ)が食べてるの、おいしそうだったから」 自然とぶつかった視線の先で、困ったような表情を作っている。それがどういう意味合いを持っているのか、わかるくらいにはそばにいる。 「はいはい、お邪魔虫が通りますよっと」 「総司、わかってるなら端に座って」 「いーやーだー」
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